2009年11月07日

なんのための計画か−障害者自立支援法を総括してみる(17)

 さて、前回のエントリーで前ふりをした計画についてである。
 障害者自立支援法のマクロ的な最大の失敗は、厚生労働省が画策した介護保険との統合がなしえなかったことである。そして、グランドデザインから介護保険を見通しながらも障害者自立支援法を作るにいたって、介護保険との統合を意識しながらも、介護保険の仕組みだから成り立ち得るものを、そのまま取り組んでしまったことにある。
 この障害福祉計画も、その失敗の中心的な一つである。

 わかりやすいように、介護保険制度の介護事業計画と比較して障害者福祉計画をみてみよう。
 介護保険制度は、社会保険の制度である(といわれる)。65歳以上の第1号被保険者、40〜64歳までの第2号被保険者が保険料を支払う。第1号被保険者は、保険者である市町村に保険料を納付する。保険者である市町村は、介護保険事業計画によって、3年間のサービスとサービス量を推計し、第1号被保険者の介護保険料を決める。単純な計算ではないので、平易に説明することが難しいが、極めて単純化すると介護保険のサービスが充実し、たくさんサービスを利用する人がいれば、第1号被保険者の介護保険料もあがる仕組みになっている。【注】
 介護保険の場合、@要介護認定によって一人一人のサービス利用上限がきめられる。A居宅介護支援員によって、サービスのコントロールが行われる。B第1号被保険者の保険料というエッセンスで、介護保険事業計画が決められ、総量としてのサービス量が抑えられる。という3つの要素があり、@ABがきちんと連携するような仕組みになっている。介護保険は、確かにサービスを民間に開放し、民間事業者の参入を受け入れたが、総体として、このような仕組みになっているので、パイは決められている。また、4つめのエッセンスとして、報酬自体のコントロールによっても、事業者の経営はコントロールされている。
 比較してみて、障害者自立支援法はどうだろうか。
 @障害程度区分は介護給付の一部のサービスの利用制限を行うが、訓練等給付には関係ない。また、一人一人の利用基準もきめない。A居宅介護支援員はいない。B保険制度ではない。その中で、障害者福祉計画だけが3年ごとの計画としてたてられた。もともと、介護保険より全般的に報酬単価が低く定められている障害者自立支援法のサービスは、報酬的な参入インセンティブが働かない。そうすると、みため、介護保険に類似する仕組みをつくっても、介護保険のように押さえる仕組みもなければ、ニーズはたくさんあってもサービスを開発するエッセンスもない。介護保険の居宅介護支援員がたくさんのニーズを吸い上げる仕組みを持っているのに対し、障害者自立支援法は機能不全を起こしている相談支援(+地域自立支援協議会)。そしてその関係性もあきらかではない。そうなってくると、変な話だが、障害者福祉計画は、国が出す重点施策は無理矢理にでも計画化し開発する。国が押さえたい部分については、ワークシートを配り、計画の数値というコントロールをかけるという構造になる。
 つまり、障害者福祉計画は障害者自立支援法が介護保険と同様の仕組みになれば、意味があったが、機能不全の障害者自立支援法では何の意味もない計画づくりになってしまうのである。数値をいれても「達成されませんでした」。必要ないのに「数値」や達成目標が計画化される。これを計画とはよべまい。
 介護保険との統合がなされないとなった時点で、セカンド・カウンタープランを示せなかった障害者自立支援法は、マクロ政策としては大失敗だといわざるをえない。

【注】実はこんな単純な計算ではでない。市町村の高齢化率、要介護高齢者の人数などいろいろな要素がたくさんある。介護保険事業計画をたてるためのワークシートが、三年ごとに国から配られるが、とても複雑である。最後にしっかり、第1号被保険者の保険料も出る。
posted by 凸凸 at 21:22| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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